アベノミクスの行方

自民党の圧勝に終わった昨年の総選挙後から、円安・株高が進行し、マスコミもちょっと浮かれた状態になっている。

安倍首相は、小泉政権以来続いてきた財政に関するタガを外し(実際は昨年度の野田政権でも「震災復興」という名目で外しているのだが)、赤字国債を大増発し、公共投資を大幅に増やし、かつ、日銀にインフレターゲット2%を掲げさせて景気浮揚を図っている。これを「アベノミクス」というようだ。

景気浮揚⇒国民の収入UP⇒税収増⇒国の借金減 という好循環となるのであれば、特に文句を言う筋合いもないし、思い切った政策転換、と評価されることとなるだろう。

しかし、果たしてそうなるのか??が問題で、負の側面も検証しなければならない。

私が今回の景気対策で一番の問題と考えるのは、日本の経済が落ち込み、デフレスパイラルに陥っている最大の原因「少子化」への対策がなんらとられていないことだ。

経済を浮揚させる原動力となる、人口増圧力がないまま、いわばカンフル剤(換言すれば対症療法)的な公共投資増だけ行っても、成長は持続せず、カンフル剤が切れたとたんに失速することは目に見えている。

出血によってショック症状となった患者に、昇圧剤(公共投資)だけで対処してもダメで、根本原因たる血液不足に見合う輸血(人口増)をしなければやがて患者は死んでしまう。

また、円安となっているのは、日本の産業輸出力が落ちたこと、並びに大企業が生産地を国内から国外に相当程度既に移してしまっていることを背景に、日本の国際収支が赤字基調となっていることが背景となっていることを忘れてはならない。

通貨の高低は、基本的には国際収支によって決定される。日本は貿易黒字国であったが故に円高が続いてきたが、日本の輸出力が落ち、かつ、基本的に各種原料や農産物を輸入に頼らざるを得ないことを考えれば、今後は円安傾向となることも予想される。また、円の価値が2分の1~3分の1にでもなればべつだが、中途半端な円安になっても、新興国との賃金差を考えれば輸出力は回復しないだろう(長年ドル安であった米国が良い例)。

以上を総合すると「アベノミクス」で何が起こるか?

まず、株高はしばらくは続くであろう。円安となる限り、トヨタなどの大企業の収益は改善されるからだ。しかし、景気自体はこの株高とは乖離し、建設業などの限られた業種にしか浮揚効果は及ばないだろう。建設業が潤っても、生活必需品などの一般的需要が大きく増すわけではない。せいぜい、昨年度仙台等でみられたという歓楽街などごく一部の業種が潤うだけだろう。株高によって、証券会社、高級車など一部の富裕層向けのサービス・小売業も上向くかも知れない。

一方、庶民の暮らしはどうか。株が上がっても、給料が上がる訳ではないのは誰にでもわかる。給料が上がるには、経済団体や竹中氏なども、「2~3年はかかる」。ただし、これは、先に指摘したように、アベノミクスが一時的な景気浮揚効果しかないのではなく、持続的な成長が可能であった場合の話だ。現実には、庶民の給料が上向く前に、アベノミクスの効果が一般的でないことがはっきりすることになるだろう。

これとは逆に、生活を直撃するマイナス面は、早期に現れてくるだろう。

まずは、円高に伴う物価高である。これは速やかに生じるだろう。

もっとも恐ろしいのは、国債の信任の低下に伴う金利高だ。最近の変動金利はやや上昇しているようだが(http://www.sumai-fun.com/l-hikaku/010/post4.htmlなど参照)、仮にこれが大きく上昇するようになれば、現在の低金利による運転資金の借り入れでようやくつないでいる企業や、最近の不動産価格の低下をチャンスと見て、ぎりぎりの住宅ローンを組んでしまっている若年層などに破綻が相次ぐだろう。

結局、アベノミクスとやらはろくな結末にならず、ただでさえ先行き不安な日本に、致命傷を与えかねない中途半端(言い換えれば昔の高度経済成長時代の自民党流)の政策だと思うのだが、あまりマスコミはこの点切り込んでいない。

後になっては批判するのだろうが。

 

 

青山雅幸 の紹介

ライトハウス法律事務所所長。 一見怖そう。人情に厚く涙もろい一面も。
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