真実の裏側

私が定期購読している雑誌に「医療判例解説」という雑誌がある。

医療裁判で判決までいった裁判例について、医師や弁護士が解説を加えたものだ。

最近の潮流を反映するかのように、そこに記載されている判決は原告(患者)敗訴判決が多い。

これだけ読んでいると、まるで医療裁判など滅多に勝たない、医療側は大抵正しい、というような印象を受けてしまう。

果たしてこれは真実か?

当然ながら、これは世の中のたくさんの事実の中のほんの一握りの事実に過ぎない。

それは、何故か。ここまで読んで下さった方が普通に推測すれば、その雑誌が患者側勝訴判決をあえて無視している、と考えられたかも知れない。

そういうこともあるかも知れないが、もっと大事な事実が世の中に「隠蔽」されてしまっている。

私が担当している医療事件において、判決までたどりつくのは極めて稀な事件だ。

大多数の事件は、そこにたどり着くまでに「和解」で解決してしまう。「和解」となってしまえば、判例集に載ることも「「医療判例解説」に載ることも無い。
裁判までなっていればたまに和解が報道されることもあって、新聞報道として世に出ることもあるが、詳細までは第三者にわからないし、他の裁判の参考にされることもない。

裁判においては、前例、すなわち他の裁判例が大変参考にされるのだが、「和解」では、他の裁判の規範にはならない。

もっと問題なのは、非常に深刻な過失がある事件は、裁判前に「金を積んで解決」されてしまうことだ。
この手の事件の場合、医療側は賠償金を払う代わりに「守秘条項」を入れるよう強く要求してくることがほとんどである。

当事務所は、基本的には守秘条項を入れることは拒否しているが、日本人は、事を荒立てるのを嫌う性質があり、依頼者の意向によってはやむを得ず受け入れざるを得ないこともある。

そのような事件は、医療論文として報告されることもなく、したがって、他の医師らが「もって他山の石」とすることもできない。エラーがフィードバックされて再発防止策が練られる、というのが今の世の中の基本だが、現在の医療界ではこの機能が麻痺してしまっているのだ。

この「守秘条項」や「和解事例が世に出ないこと」の問題は、実は、大変大きな問題である。日本の医療の進歩を間違いなく妨げる要因ともなるし、一般の方がその情報で危険な医療機関や危険なシチュエーションを避けることもできない。

医師といえども、自分も患者となりうるわけで、このような事態が続くことは、決して世のためにならないだけでなく、医師自身やその家族をも危険にさらすことにつながっていることに何故気づかないのだろう?

青山雅幸 の紹介

ライトハウス法律事務所所長。 一見怖そう。人情に厚く涙もろい一面も。
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