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解決例

最近の解決事例の中から、依頼者のご承諾を得て紹介しております。

陣痛促進剤投与により過強陣痛となり、羊水塞栓が発症して母児共に死亡した事例

30代の経産婦 Kさん / 産科診療所

【事案】

30代の経産婦Kさんは、初診日から出産予定日までの約8か月間、相手方産科病院にて定期健診を受け、順調な経過で出産予定日を迎えました。

出産予定日を過ぎても出産の兆しがなく、予定日から4日過ぎた時点で、産科医の勧めにより陣痛促進剤を使用して出産するため、相手方病院に入院しました。予定日より4日過ぎただけなら、陣痛促進剤投与などによる分娩誘発は医学的には不要で、いわゆる社会的適応(産科施設等の都合により計画的に出産をさせること)による陣痛促進剤の投与でしたが、そのような説明はありませんでした。

翌朝から、陣痛誘発剤(アトニン(成分名:オキシトシン))の点滴(20ml/h)がはじまり、分娩監視装置がつけられました。開始当初の午前8時30分、子宮口30㎝開大 SP-2(下降度)と分娩第1期初期の段階でしたが、午前9時には既に10分間に3回程度の良好な陣痛が発現しました。

にもかかわらず、1時間に一度の割合でアトニンの機械的増量が続けられたため、午前10時(この時点では30ml/h)には10分間に6度の子宮収縮がみられる過強陣痛に至りましたが、アトニンは減量・中止されず、かえって午前10時20分には40ml/hに増量され、これが午後2時50分まで維持されました。当然、陣痛図では、過強陣痛の状況が継続していました。

その後、午後2時半頃、陣痛らしきものが起こり、出産準備に入りましたが、胎児の心拍数が落ちたため、急遽帝王切開をすることになりました。午後3時15分頃、分娩室に運ばれたKさんは、ベッドから分娩台までの数メートルの移動中に息苦しさを訴え、その直後、痙攣を起こし意識を失いました。

Kさんの意識はそのまま戻らず、付近の総合病院に搬送されましたが、心停止となり、同日午後5時頃、Kさんと胎児は帰らぬ人となってしまいました。

司法解剖による病理組織検査の結果、肺にて血管内に扁平上皮等の羊水成分による塞栓が多数認められ、死亡原因は、羊水塞栓症と診断されましたが、同時に子宮粘膜の裂傷の存在も確認されています。

【問題点】

本件は、剖検で羊水塞栓症による死亡が確定している事案で、しかも経過から、劇症型(肺塞栓症類似の病態で、進行が急激で予後不良である症状)の羊水塞栓症であったとみられます。

羊水塞栓症事案は、医療過誤事件としては今までは困難な事例とされていましたが、本件では、あまりにずさんな陣痛促進剤投与と管理の欠如が見られ、かつ、司法解剖により過強陣痛によるものとみられる子宮粘膜の裂傷も確認されていたことから、

陣痛促進剤投与→ 過強陣痛 →子宮の部分損傷 → 損傷部位からの羊水成分の血中流入 → 羊水塞栓症発症 → 死亡という因果関係が認められる

という協力医のアドバイスを得て、提訴に踏み切りました。

【解決】

訴訟では、陣痛促進剤の添付文書中の「警告」に違反した不適切な陣痛促進剤の増量があったことを前面に押し出しました。

結局、被告は抽象的な反論しかできず、訴訟提起後約2年で、証人尋問及び鑑定を経ずして裁判所から和解勧告があり、6,500万円の和解金が支払われることにより解決しました。

本件を踏まえて望まれること

本件では、陣痛促進剤の無謀な投与さえ無ければ、母児が死亡することはなかったと考えられます。言い方を換えれば、医療行為そのものが、あるはずもなかった重大な結果をもたらした、本当に痛ましい事件です。

陣痛促進剤投与についての一般的注意義務さえ払われていれば、本件は起きなかったものであり、今回の事件を苦い教訓として、同様の事件が再発されないことを心から望みます。

近時、特に産科医療は、「医療崩壊」という錦の御旗のもと、一時大変問題視された(医療過誤を繰り返す)リピーター医師・病院等の「質」の問題の検証がなおざりにされています。

医師・病院が多忙であることと、最低限の水準の医療が行われていないことは、別の問題であり、医療の「質の問題」により、尊い命が失われている現状は、以前と変わりありません。

医師会を始めとする医療側においても「患者の生命・身体を守り、同時に自らの医療レベルを向上させていく」という観点から、医療事件の冷静な検証を行われるよう、切望するところです。

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