医療過誤の解決事例

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医療過誤の解決事例

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50代 女性私立総合病院

救急医療の問題点

事案

Gさんは、当時50代の女性であり、夫と子供達とともに暮らしていました。Gさんは、家事育児を切り盛りしながら、勤めにも出ていましたが、定期健診で心電図に若干乱れがあると指摘される以外には、持病もなく、通常の生活をしていました。
ある早朝、Gさんは自宅で突然倒れ、救急車で、救命救急センターに指定されている私立総合病院に搬送されました。このときのGさんは、意識不明、右半身不随、嘔吐を伴うという非常に危険な状態でした。
Gさんが搬送された私立総合病院で初診を行ったのは、研修医2年目の医師でした。この医師は、Gさんの頭部CTを一度撮ったのみで、「過度のストレスによるうつ病」と診断し、投薬を行い、自力歩行もできないGさんを帰宅させました。
帰宅後も、Gさんは、意識不明瞭、全身痙攣、半身麻痺などの症状から回復せず、Gさんの家族らは何度も病院に問い合わせましたが、病院側は、初診で下されたうつ病という診断を覆すことはありませんでした。
その後、Gさんは精神科医や整形外科を外来受診しましたが、「特に異常はない」「本人の意思が表明できるようになってから判断する」と言われ続けました。
初診から12日後、またも自宅で倒れたGさんは、救急車で搬送され、脳梗塞と診断されました。医師からの説明では、今回は「2度目」の発作であり、すでに手の施しようがない状況であるとされ、搬送から7日後、Gさんは帰らぬ人となってしまいました。

問題点

1.家族は地域の中核医療を担うべき「救急医療センター」である当該病院を信じ、医師の診断を信じました。しかし、救急救命において最も根幹であるべき初診について、経験の浅い研修医にまかせきりになっており、研修医が下した判断について、経験のある医師がそれを検証することもなく放置され、最悪の事態を招くまで、家族らの訴えは聞き届けられませんでした。

2.初診時のGさんの症状は、重篤な意識障害、言語障害、半身不随という緊急事態であり、これは脳梗塞に一般的な症状でした。また、「初期の脳梗塞はCT画像には写らない」ということを知っていれば、MRI検査を併せて行う、もしくは、保存的治療を続けながら再度CT画像を確認したはずであり、これを行わなかったことにより、初期脳梗塞の適切な治療を行う機会を見逃してしまいました。なお、ストレスによるうつ病との診断は、MRIやCTといった検査を尽くした上での最終的な除外診断として行うべきでした。
  
3.上記1・2については、単に初診を行った研修医個人の診断ミス・力量不足と言うにとどまらず、救急医療のあり方そのものが問われる、重大な事件であったと言えます。この事件について、当該私立総合病院に、救急医療(当直)を行う医師の人選に関して、真摯な姿勢があったかといえば、甚だ疑わしく、それゆえに、医師を選べない緊急事態の患者の人命を預かるに相応しいとは言い難いものでした。患者の家族は、救急医療に対する信頼を著しく裏切られることになってしまったのです。

和解内容

1.私立総合病院は、患者の遺族らに対し、和解金5,200万円を支払う
2.私立総合病院は、今後医業を継続する上において、本件を十分に反省し、同様の事態が2度と起きないよう再発防止に努めることを誓う。

当該私立総合病院は、指定医療機関として、さまざまな認定を受けており、患者の家族はそれらを信頼して当該病院を受診しました。 
しかしながら、本件医療事故の内容はその医療水準を疑わせるものでした。もしこれが都市部に存在する高度救命救急センターであったら、起こりえないはずの初歩的なミスでした。医療格差が叫ばれる中、静岡県における救急医療体制のあり方そのものが問われる重大な事件であったと考えています。

  

弁護士法人 ライトハウス法律事務所

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