医療過誤の解決事例

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医療過誤の解決事例

最近の解決事例の中から、依頼者のご承諾を得て紹介しております。

1歳 幼児開業医 産婦人科・小児科・内科(標榜科)

問診・触診の重要性と専門外診療の問題点

事案

被害者は当時1歳のEちゃん。
数年前のある日の夕方、Eちゃんは数回嘔吐しました。発熱もあったため、翌日、母親が、近所にあったX医院を受診したところ、担当した医師は、特に聴診等は行わず、症状を聞いただけで「感染性胃腸炎」と診断し、風邪薬など何種類かの薬を処方しました。

ところが、その翌日になっても、Eちゃんの嘔吐は治まらず、明らかにぐったりとしており、おむつ交換の際に体の痛みを訴えるようになったため、再度、X医院を受診しました。
このときに診察した別の医師は、「おむつ交換の際に痛がる」等の症状を母親が訴えたのに対し、特に聴診・触診をすることもなく前日のカルテに目を通しただけで「吐きすぎて胃が荒れているのでしょう。」と診断し、「よくなる、よくなる」とEちゃんのお腹を触っただけでした。

しかし、さらにその翌々日になってもEちゃんに快復の様子は一向に見られません。
このため、母親がEちゃんをつれて別の医院を受診してみたところ、今度の医院では直ちに血液検査・体位を変えての痛みの検査等を行い、髄膜炎の疑いがあるとのことで、私立総合病院Yを即日緊急紹介しました。
すぐに駆けつけた総合病院Yで、髄液検査を行った結果「最重症の化膿性髄膜炎」と診断され、Eちゃんは生死の境をさまようことになりました。
一週間ほどして、Eちゃんの意識は回復しましたが、半身麻痺、言語能力の遅滞等、重い後遺症が残ることになってしまいました。

問題点

1.化膿性髄膜炎は、早期に適切な治療を行うことで、死亡率や後遺症の残る率が低くなる病気です。2度目にX医院を受診した際に、母親が「おむつ交換の際に痛がる(髄膜炎の特徴的症状である、頸部硬直に伴う痛み)」と担当医師に告げていたにも関わらず、担当医師は、これを確認するための診察(体位を変えて動かす、触診する等)すら行っていませんでした。こうして髄膜炎が見逃されたために、髄膜炎は重症化し、Eちゃんに重い後遺障害を残す結果となってしまったのです。

2.また、我が国では、医師は、自分の専門以外の科を自由に標榜(看板や肩書きな
どに掲げること)することができます。このため、私達は、医師の選択をする際に、
知らず知らずのうちに、専門外の医師にかかってしまう可能性もあるわけです。
X医院は、「産婦人科・小児科・内科」を標榜していましたが、実際は小児科や内科は専門外だったようです。このため小児科医であれば当然知っているはずの、髄膜炎に関する知識がなく、症状を見過ごす結果になってしまいました。
本件の問題は、単に髄膜炎を見落としたということにとどまらず、一般市民が医師の選択をすることが難しいことや、医療の情報に関する法制度が整備されていないという問題も含んでいるのです。

解決

Eちゃんを診察した医師らは当初、Eちゃんのご両親らが説明を求めた際に、まともに取り合おうとしませんでした。
このため、不信感を強めたご両親が、医療事故110番に相談されたのです。

本件では、解決までに4年を要したものの、X医院がEちゃんならびにご両親に対して、1,600万円を支払うことで和解が成立しました。

  

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