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【急性心筋梗塞の見落とし】激しい胸部痛を訴え救急外来を訪れた患者が急性心筋梗塞を示唆する異常所見を見落とされて自宅に帰され,その後死亡した事案

50代男性Bさん 公立総合病院 救急 / 

事案の概要

Bさんは朝、通常どおり出勤しましたが,職場で胸部痛を訴えました。胸を押さえ、体を曲げ、脂汗を流すなどかなりの痛みでした。すぐにY公立総合病院の救急外来を受診しましたが,そこでも胸部痛・背部痛・吐き気を訴え,造影CT・胃カメラ(経口)・心電図・血液検査が行われました。検査後,Bさんは相変わらず痛みに悶えていましたが、担当医は「検査ではどこも悪くない、何を与えてよいか分からない」「入院しても何の処置もしようがない」と説明し,夕方に帰宅させました。しかし,Bさんは帰宅後、顔色がひどく悪くなり激しい痛みを訴え,吐き気・冷汗もみられました。その後,倒れて意識が消失しました。救急車が呼ばれ,心臓マッサージが施されましたが,Y病院到着後すぐに死亡が確認されました。

問題点

本件では,以下の愁訴などから心筋梗塞を強く疑うべきでした。

(1)愁訴
Bさんは,午前中に胸部痛を発症し,Y病院救急外来を受診した時点ですでに胸痛は30分以上継続していました。しかも、Bさんは、その後の検査中も耐え難い痛みを訴えており、帰宅するまでの胸痛の持続時間は実に8時間もの長時間でした。これに加え、急性心筋梗塞に典型的な随伴症状とされる背部痛、冷汗、嘔気も訴えていたのであり、これらの臨床所見からも急性心筋梗塞が強く疑われました。

(2)病歴及び冠危険因子
Bさんは,高血圧,糖尿病により投薬治療中でした。また,50代男性,20本/日の喫煙習慣,高脂血症(高トリグリセリド血症)であったため,冠危険因子といわれる要素のほとんどを有していました。冠危険因子が0の人に比して実に35.8倍もの心疾患発症の危険があった。

(3)心電図所見
救急外来を受診した際の心電図には、V1、V2誘導に顕著なT波の増高(hyperacute-T)が見られました。これは急性心筋梗塞の超急性期に見られる特徴的な心電図所見でした。

以上によれば,Bさんが救急外来を受診した際、急性心筋梗塞の超急性期にあったことは十分疑えました。
今回の事例では、血液検査においてトロポニンT、CK-MB等の心筋マーカーの上昇は見られませんでしたが、急性心筋梗塞の発症から血液検査で異常所見がみられるまでにはタイムラグがあることはよく知られている事実であるため,このことから急性心筋梗塞を除外することはできません。
また,急性心筋梗塞の診断にあたっては、タイムラグをもって心電図、血液検査、心エコー等の異常所見が現れてくるため,これら各検査を繰り返し行ってその経時的変化を観察しなければならないとされているにもかかわらず、Y病院は、最初の来院時に心電図検査及び血液検査を行ったのみで,その後約7時間の病院在院時にこれらの追加検査を行わず,本来であれば確認できたはずの異常所見をとらえることができませんでした。この結果,Bさんの急性心筋梗塞を看過したばかりか、来院から約7時間強の間、治療のゴールデンタイムをみすみす無駄に費やしてBさんを帰宅させ死亡させたのですから、その過失は極めて重大であるといわざるを得ません。

解決・和解

本件は,医師らの証人尋問が行われましたが,担当医が私の医学的証拠を示しながら行った理詰めの反対尋問に対し,「なるほど」と言って,見逃しを事実上認めたのが印象的でした。尋問結果を受けて裁判所から和解勧告があり,訴状記載の提訴額と遜色のない相当額の和解金が支払われることとなりました。
  心筋梗塞の見落としは,実際の医療において相当あるとみられ,本件は氷山の一角に過ぎません。救急外来担当医が標準的な医学的知見さえ知っていれば,見落とすこともなく,また救命可能なのが急性心筋梗塞です。その意味で本件は極めて残念なケースですが,医療側においても,今後の再発防止の参考に是非していただきたいと思います。

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