「一ヵ月後に100万円を倍にします。今やらなければ手遅れです。」などとしつこい勧誘を受けたご経験はないでしょうか?いわゆる先物取引です。

 先物取引という言葉はチラッと聞いたことがある人が多いでしょう。横領や強盗などの事件が起こると、「先物取引で損をした穴埋めのため犯行に及んだ」という報道がなされることもしばしばです。
 しかし、先物取引がどんなものなのか、知っている人はほとんどいないでしょう(本当はこういったことを学校できちんと教えるべきなのですが)。
 そこで、まず、先物取引とはどんな取引なのかを説明します。
その1.先物取引とは?
 
 先物取引とは将来の物の値段を予想して売買を行う取引です。

 例えば今現在金が1グラム1000円だったとしましょう。この6ヶ月後価格を予想し、価格が上がると思えば「買い」の注文をし、下がると思えば「売り」の注文をするのです。
 1000円の値段で買いの注文をした場合、6ヶ月後に金の価格が1200円になっていれば200円の儲けなのですが、800円になっていれば200円の損なのです。これを1000万円分取引したとすると、それぞれ200万円の儲け、または損ということになります。売りの場合の損得はこの逆です。

 これだけ聞くと何が怖いのかピンとこないかもしれません。
 「1000万円投資して、200万くらい損しても仕方ない。逆に200万円くらい儲かるかもしれないのだから。」と思う人もいるでしょう。
 が、先物取引というのは実は元本の保証(自分が預けたお金がそのまま減らずに戻ることを約束すること)もまったくされないばかりか、預けたお金がゼロ―つまり1000万円をまるまる損する―になった上でさらに巨額のお金を払えと請求されることもある、恐ろしい取引なのです。

 なぜこんなことが起こるかというと、その理由は主に3つあります。

先物取引では総取引金額の5〜10パーセント程度の資金―「委託証拠金」という―で取引を行う仕組みとなっているから。
 どういうことかというと、たとえば1000万円資金があったとすると、その1000万円で1000万円分の取引をするのではなく、1000万円の10倍つまり1億円の取引をさせられてしまうのです。
 したがって、1億円の取引で値段が10パーセント損するほうに動けば自己資金1000万円全額がなくなってしまいますし、20パーセント損するほうに動けば自己資金がまったく戻ってこない上にさらに1000万円支払えといわれてしまうのです。現実にもわずか2週間で約6億円をマイナス3000万円にされてしまった例さえあります。

 

短期間で損するか得するか絶対に決まってしまうため
  6ヶ月や1年先の物の値段をあてる、これは簡単なようで実はすごく難しいのです。
 いろいろもっともらしい理屈をたてて上がるか下がるかの予想を業者は言ってきますが、ちょっとした景気や天候の変動で、値段は簡単に予想とは異なる方向に動きますので、まったくあてになりません。
 さらに、株式なら、仮に株価が下がっても、売買しないでずっともっていて、将来の値上がりを期待する(これを「塩漬け」といいます)という方法も取れますが、先物の場合は、必ず6ヶ月後なら6ヶ月後の決められた時点までに処分(これを「仕切り」といいます)しなければならないため、損を先送りすることができないのです。

 

莫大な手数料を業者に支払うこと
 現実の資金(委託証拠金)に対する手数料は(条件によって違いますが)、8パーセントにものぼり、最初の注文時と、処分時に必ずかかるため、両方で16パーセントもの手数料を業者に払わなくてはならなくなります。
 したがって、損も得もまったくしないでいても、6回取引すれば手数料だけで資金はなくなってしまうのです。現実にも、例えば3000万円を損したとして訴訟を起こした場合、損のうちの1000〜1500万円は手数料の損失というようなケースはざらにあります。
 
 業者にとっては、できるだけ多くの取引を繰り返してもらえばそれだけ儲かり、社員も歩合給(儲けに応じて給料を余分にくれること)が入るため、客にとって損か得かは関係なく、できるだけ多く取引させることに血眼になります。
 そして、客に資金が続く限りは取引を止めさせず(これを「仕切り拒否」といいます)儲かった分はそのまま次の取引に無理やりつぎ込ませるのです。
 そして、やがては損をして、取引ができなくなるとやっとそこで客を解放し、客は1円のお金すら残らないという、とんでもないやり方がまかりとおっているのです(これを「客殺し商法」といいます)。

 ここまで読まれた方は、なんでそんな危険な取引をやる人がいるのか不思議に思われるでしょう。しかし、業者は勧誘の際にはこういうことは一切説明しません。そればかりか高校の同窓生を名乗ったり、職場に何度も電話して会う約束をするまで電話を切らなかったりなどの無茶なやり方でだまされやすい人を誘ってくるのです。
 そういうときは、話の途中でも電話を「ガチャン」と切ってください。
 普通の人は絶対に先物取引に手を出さないほうがいいのです。
 また、万が一損をしてしまった人は、すぐに先物取引被害に詳しい弁護士に相談してください。何割か戻ってくるケースが通常です。

(法律マニュアルは「弁護士も聞きたい法律相談」より引用・一部内容を訂正して掲載しております。)

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