医療過誤の解決事例

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医療過誤の解決事例

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静岡県中東部在住のAさん内科

胃瘻(胃ペグ)交換時のミスと救急対応の遅延

事案

Aさんは、脳内出血を起こし、救急車でB公立総合病院に搬送されました。同病院では開頭手術が行われましたが、Aさんの意識は回復しないままでした。
それから4ヶ月後、AさんはB公立総合病院にて胃瘻の手術を受けました。胃瘻とは、食べ物の経口摂取ができない場合に、体外から胃に向けて穿刺して体外と胃を繋ぐルートを設け、そこに栄養管(胃ペグ)を固定的に設置し、この栄養管を通して、直接胃の中に栄養液を注入する方法をいいます。
その後、Aさんは、療養型病院であるC病院に転院しました。

その2年後、栄養剤がペグから漏れがちであったため、Aさんは、B公立総合病院外来で、ペグの交換をしてもらい(使用された胃内ストッパーは、頑強な三角錐状のものが用いられているバンパー式カテーテル)、C病院に帰院しました。この交換時、胃瘻の損傷を示唆する出血がみられたにもかかわらず、担当医師は「手応え」だけで正常に挿入されたと判断しています。
ペグ交換をした当日午後5時、C病院は、Aさんに栄養剤を注入しました。その後、午後7時30分、Aさんの気管切開部より淡血、茶褐色の嘔吐がみられ、午後7時45分、胃洗浄を行いましたが、内容物はほとんど吸引できませんでした。
その晩から翌朝にかけて、Aさんは、全身色不良であり、心拍数は一貫して140―150代と頻脈という病状となり、翌朝午前9時30分には、四肢冷感、チアノーゼ、顔色・全身色不良という重篤な状態となりました。おそらくは、この時点で既に、Aさんは重症敗血症性ショックに至っていたと思われます。
AさんはC病院の看護師らが付き添ってB公立総合病院を受診し、内視鏡検査で、胃ペグが胃から腹腔内に逸脱されている状況が確認され、汎発性腹膜炎及び右横隔膜下膿瘍と診断されました。にもかかわらず、緊急手術が即実行されるなど適切な対応がとられず、あたかも外来一般患者のような遅延した検査等が行われている内に心肺停止状態となり、いったんは蘇生したもののその日の内に死亡されるに至りました。

問題点

1 胃ペグ交換時の問題
B公立総合病院は、Aさんに対し、胃ペグが設置される以前にも経鼻栄養管を気管肺部に誤挿入し、気管肺部を損傷するという医療過誤を起こしていました。
本件でも、交換時に出血という、通常は見られない所見があったにもかかわらず、間違いなく胃瘻を通じて胃ペグの先端(胃内ストッパー)が胃内に装着されているかの確認を怠りました。出血は胃瘻の損傷を示唆するもので、損傷があれば、損傷部から腹腔内に胃ペグが誤挿入される可能性が高まります。胃ペグ先端が胃内ではなく腹腔内に存在していれば、注入された栄養剤に大量に存在する雑菌が腹腔内にばらまかれ、容易に汎発性腹膜炎が起こってしまいます。
このような事態を防ぐためには、内視鏡を使用するなど、より慎重な確認方法がとられるべきでした。
2 一方、C病院においては、胃洗浄時に使用した注入液がほとんど引けていないという、胃ペグの先端が腹腔内にあることにより、胃ペグより送られた液体等が腹腔内に漏出していることを明確に疑わせる事実を確認し、なおかつ頻脈等ショック症状が発現していたにもかかわらず、これらに対応できる高次医療施設(B公立総合病院)への搬送が翌日朝まで遅れました。
3 B公立総合病院では、最初に行われた内視鏡検査で、胃ペグが外れていることが確認され、汎発性腹膜炎の診断が行われました。本来、この状況であれば緊急外科手術、抗ショック療法などが直ちに行われるべきでしたが、B公立総合病院では一般外来患者と変わらないような手順でゆっくりと検査等を行って時間を空費し、結局手遅れとなりAさんは死亡してしまいました。

解決

本件では、当初、B公立総合病院のみ提訴しましたが、B公立総合病院の「C病院にも責任がある」という主張により、C病院も追加提訴しました。途中からは、実質上B公立総合病院とC病院との間で「どちらの過失がより重大か」と、被告同士が互いに責任をなすりつけあうような裁判となりました。
このため、裁判でも余計な時間がかかってしまいましたが、病院側がそれぞれ賠償金を支払うという内容にて和解が成立しました。

  

弁護士法人 ライトハウス法律事務所

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