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医療過誤の解決事例

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医療過誤の解決事例

最近の解決事例の中から、依頼者のご承諾を得て紹介しております。

40代 女性浜松医療センターの産科事故で約2億円の損害賠償を命ずる判決を得た事例

CTG上の異常波形(レベル3以上)が頻発していたにもかかわらず子宮収縮薬による分娩促進を行い、かつモニター波形の判読不能を放置して娩出時まで胎児異常に気付かず、児に重篤な後遺障害を残した事例

【事案の概要】

1 前期破水による入院
妊娠39週2日の23時30分,患者は自宅にて破水し,日付が変わった39週3日の0時1分,被告センターに到着した。医療記録の記載は「子宮口かなり後方ほぼclosed 展退30% st-3 持参パッド・内診指にてBTB紙青変」、前期破水であり、患者はそのまま入院したが医師の診察は行われなかった。
23時2分,体温37.1度と上昇がみられ、夜間強い痛みを訴えたが、上行感染に対する対応(抗菌薬投与・血液検査等)は行われず、医師診察もなかった。

2 分娩当日(39週4日)の経過
(1)熱発等
助産師の内診で4時20分(助産師内診)の進展度は「開大度:3㎝、展退度:70%、St:-2」であった。7時15分,体温37.7度(患者によれば一度目の測定では38.4度)、頻脈が記錄されたが、医師の診察は行われず、抗菌薬投与も血液検査も行われなかった。
(2)早朝からのCTG異常
4時31分より基線細変動減少が出現し、7時8分より頻脈(165)ないしは正常脈上限(160)であり、基線のみの判定でも波形レベル2〜3の異常が続いた。
これに加えて、①4〜5時台に軽度変動一過性徐脈3回(波形レベル3)、②5時32分〜6時56分中断、③7時台3回(同3〜4)、④8時台3回(同4〜3)、の胎児機能不全(波形レベル3以上)が続いた。
医師は9時0分に1回診察したのみで、その際CTG図もまったく確認しなかった(尋問結果)。また、助産師も上記異常を報告基準(当時の被告ルールではレベル5相当のみ)に達していないという理由で報告していなかった。この有様で、医師は10時からアトニン(オキシトシン)にて分娩促進を決定。なお、この際の内診における分娩の進展度は「開大度:4㎝、展退度:70%、St:-2」であった。
(3)直前ないしは実施時の異常所見を無視しての子宮収縮薬投与
① 9時0分に正常脈・基線細変動減少下で、軽度変動一過性徐脈(波形レベル3)
となった後、10時からアトニン投与予定であったにもかかわらず、②9時6分〜42分までCTGが中断され、③9時42分〜9時59分まで頻脈or正常脈・基線細変動減少下で、軽度変動一過性徐脈(同4〜3)5回・高度遅発一過性徐脈1回(同4)、であったにもかかわらず、10時5分に助産師がアトニン投与を12ml/hで開始。 ④その直後10時6分に頻脈・基線細変動減少で高度変動一過性徐脈(同4)があったが投与は続けられ、医師への報告も一切されなかった。
(4)投与後の異常所見の継続
10時以降も、基線は基本的に頻脈・基線細変動減少(波形レベル3)であり、そこに①10時台7回の軽度および高度変動一過性徐脈、軽度or高度遅発一過性徐脈(同4〜3)、②11時台15回の軽度変動一過性徐脈(同4〜3)があったが、
アトニンは10時36分に24ml/h、11時9分に36ml/hに医師の判断は仰がれず、当初指示通り機械的に増量された。
 また、その間11時16分頃から10分間に5回以上の子宮頻収縮が出現した。

3  その後の娩出までの経過
11時45分以降、モニター波形は大きく乱れ、母体音が混入したかの様な判読困難な波形が続くが、放置され続けた。CTG図確認も主治医でない医師が、一度助産師から相談されたにとどまった。15時40分頃に徐脈傾向を助産師が気付き、15時49分にアトニン投与が中止されたが、急速遂娩は検討も実施もされなかった。16時16分 自然分娩で出生。体重3062g、羊水混濁著明、全身チアノーゼ、Ap0/0の最重症の新生児仮死。臍帯血pH6.819 BE-26。
転送先では重症新生児仮死、低酸素性虚血性脳症と診断。血液培養検査でGBS陽性絨毛膜羊膜炎stageⅢ,臍帯炎stage3との病理診断。子には四肢麻痺の障害が残存し、現在も人工呼吸で入院管理。

【経過】

 示談交渉するも無過失主張(CTG所見は波形レベル2との不可解な内部事故調査委員会報告あり)であったため、令和2年3月5日提訴。裁判所の和解勧奨を被告が拒否
 令和6年12月9日、児に対し1億9478万円、両親に対し各200万円の支払を命ずる判決(裁判所裁判例搭載)。被告が控訴し、原告も損害額につき附帯控訴し、第1回期日で即日結審。結審後の和解期日において裁判所が附帯控訴含め全面的に原告側勝訴の心証を明確に示し被告に和解を促したところ被告側が控訴を取り下げして原審判決が確定した。
 判決が認めた注意義務違反は、4時43分以降分娩時までほぼ間断なくレベル3から4の異常波形が出現し、特に7時30分頃からは、レベル4の出現頻度が高まり11時16分まで3時間45分続き、心拍数は頻脈・正常脈境目160bpm付近にあり、基線細変動減少の時間が長く続いているCTG所見からすれば遅くとも11時16分の時点で胎児血酸素化の不全や重篤化を疑うべき状況にあり、かつ同時刻頃から子宮頻収縮もあったところ、11時45分頃の進行度は子宮口開大5㎝・St-2・展退70%でオキシトシン投与を続けても早期の経膣分娩は望めない状況であったので、この時点で臍帯圧迫を強め胎児低酸素状態を悪化させかねないオキシトシン投与を速やかに中止して、緊急帝王切開にて急速遂娩すべき注意義務を怠った、というものである。

【コメント】

 被告は地域周産期センターでありながら、助産師に任せきりの分娩で、医師はほぼ分娩に関与していなかった。主治医として分娩に関与された医師は当時の副センター長・現センター長という要職にあるにもかかわらず、入院3日間で診察は一度だけ、その際CTG図すら一切確認していなかった。他の医師も助産師の相談により分娩約2時間前に一度診察しただけで、CTG図の異常も指摘しなかった。
 本件はこの構造的な杜撰・手抜き医療が具現化したものであった。具体的には、
①医師への報告基準は波形レベル5相当に限定されており、かつ助産師はレベル5未満の波形の判読に習熟すらしていなかった。
②2014年産科ガイドラインで「レベル3ないしレベル4が持続した場合、分娩進行速度と分娩進行度も加味し「経膣分娩続行の可否」について判断する」が推奨度Bとなったことを医師も助産師も把握していなかった
③CTGモニター画面が、紙媒体において推奨された表示形式より縦長となっていて基線細変動減少が把握しにくくなっており、それが基線細変動減少の見落としに繋がった(呆れることにそれを無責の理由の一つとして主張していた)
④分娩開始5時間前より、波形が判読困難な状況となっていたのに、それを是正しようともせず、娩出直前まで放置した結果、胎児機能不全の進行を完全に見落としして急速遂娩を試みようともせず、娩出時に重症新生児仮死であったため慌てるという不始末であった
⑤発熱や子宮部周辺の強い痛みなどに対して、血液検査もせず、抗菌薬投与もしなかった
 最も驚くのは、これだけ杜撰な医療行為をして重大な結果を招いたとの自覚が被告にはなかったことであり、控訴審裁判所から「原審判決どおりで、附帯控訴は全部認める」と明言されるまで無理な主張を続けていたのである。
 なお、本件主治医は、本件の翌年も医療水準からかけ離れたと評価される医療行為で、なすべき緊急帝王切開を行わず、新生児に本件と同様の結果をもたらしており、現在裁判で係争中である。

  

弁護士法人 ライトハウス法律事務所

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