医療過誤の解決事例

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医療過誤の解決事例

最近の解決事例の中から、依頼者のご承諾を得て紹介しております。

60代男性Aさん総合病院

胃切除後の合併症:吻合部潰瘍の見逃し

事案

 Aさんはもともと、当該病院(以下「B病院」とします)にて幽門前庭部癌に対する胃部分切除術を受け、以降、外来にて経過観察を続けていました。
 上記手術後、半年を経過したころの外来診療にて、Aさんは「空腹時の心窩部痛、左季肋部(左上腹部)痛」を訴えましたが、B病院担当医師はAさんが飲酒の習慣があったこと、アミラーゼ上昇の所見があったことから急性膵炎を疑うのみでした。その2か月後、Aさんは黒色水様便などを訴えB病院を受診し、一時意識消失などありましたが、そのまま放置に近い状態のまま入院。胃潰瘍部からの大量出血により心拍停止となり、植物状態のまま、半年後に死亡となりました。

問題点

 そもそもAさんが受けた幽門前庭部癌に対する術式「幽門側胃切除術」において、吻合部潰瘍が起きないとの思い込みがあったこと。また、外来診療において心窩部痛があったにもかかわらず、きちんと内視鏡検査をしなかったため吻合部潰瘍が見逃されたことが挙げられます。
 消化管潰瘍には特効薬であるPPIという薬剤があり、これを投与していれば軽快が見込まれたはずでしたが、これをせずに放置したことから悪化していきました。このため症状が発症してから2か月が経過した時点では、心窩部痛に加え、顔色の悪さ、出血を示す黒色水様便といった症状があったため、Aさんが直ちにB病院を受診したにもかかわらず、この段においても内視鏡検査をされないまま放置されました。
 最終的には重度の出血性ショックから虚血性脳障害となり、植物状態のまま死亡に至ってしまったという、まさに見逃しの連鎖が本件の最大の問題点であったといえます。

解決・訴訟上の和解

 本件は示談で決着することができず、裁判となりました。
 この裁判も4年という長きにわたる闘いとなりました。最終的には勝訴的和解として、解決金2500万円が支払われることとなりましたが、本件のように、診断における基本原則、すなわち患者の愁訴や検査結果からあらゆる疾患が想定される中で、最も疑わしく、最も重大なものを優先して鑑別していくという手順がしっかり採られ、今後二度とAさんのような事例が起きないことを願います。

  

弁護士法人 ライトハウス法律事務所

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